
語解を恐れるあまり、ついつい言葉が多くなる。
そしてしゃべりすぎていやあな気持ちになる。
時間芸術である音楽はもっとダイレクトに感情を表現できるけど、
絵はそれに比べるとやや内省的で、回りくどい。もどかしい。
ただ丸を描く人間に、「それは何を描いてるの?」と訊いたところで
「丸を描いている」としか答えようがない。
「ええ、自分の内面を表現しています」
とか自分で言ってたら馬鹿みたいだと思う。
自分にもよくわからないことを説明させるから
意味のありそうなことを言うしかなくてそうなる。
では、と上手に説明してみれば、
今度は馬鹿じゃなくてうさんくさい詐欺師めいてくる。
多分僕たちは、僕たちのやっていることが
伝わると思っているわけでないし、
むしろ伝わっている方が不安になる。
みたいなポエムを考えている深夜、
頭の中には常にアルバン・ベルクのピアノソナタが流れている。
伝統的なそれまでのクラシック音楽が限界に達して生まれてきた、
初めて聴くと不安にしかならないこの20世紀初頭の曲は、
何度も何度も繰り返し聴いていると、
不思議となんだか自分自身そのもののような気がしてきて、
つとにロマンティックだ。